代表的な破損症状
SD/USBメモリが壊れると
普段なにげなく使っているUSBメモリやSDカードが壊れたとき、どのような症状が顕著に現れるのか、どのような症状が出ていたら壊れたと判断したらよいのか事例を挙げて解説します。弊社に寄せられる案件ではお客様のもとで「壊れた」と明確に判断できないために対処が遅れたり、あるいは重篤な症状なのに誤った対処をして状態を悪化させてしまうものが多く寄せられます。
そのためまずはどのようなががが出てそれが壊れている状態なのかという判断の一助になれば幸いです。
ファイル名が崩れる
エクスプローラやファイルアプリで一覧を表示させたときに、見覚えのないファイル・フォルダができていたりあるはずのファイルがどこにも見つからないという症状が出ることがあります。
これは「ファイル管理用情報」が壊れはじめていることを示しています。この状態ではまだ一部のファイルはアクセス可能ということもありますが、使い続けると必ず状態が悪化し短期間で全てのファイルがアクセス不能になります。
この症状は「重度の論理破損」と呼ばれることもありますが、これを重度と呼ぶとすれば軽度とはどんな症状を指したら良いのだろうと悩むこともあります。
まだ早い段階であれば、対処を間違えない限りほとんどのデータは正常に取り戻すことができます。
「フォーマット」を促される
「フォーマットが必要」あるいは「初期化が必要」などというメッセージが出て正常に閲覧することができなくなるのは典型的な破損症状の1つです。
これは、すでにメモリ内に記録されているはずの情報が部分的に壊れていることをパソコンやカメラ・スマホなどの機器側が検知したことを現しています。
すでに部分的に(あるいは全体の)データが壊れはじめているためできるだけ早く対処する必要があります。
この状態でフォーマットを実施することはもちろん厳禁ですが、機器への接続を繰り返すだけでも状態が悪化しつづけてしまう場合があるため速やかに機器からSDカードやUSBメモリを取り外して保管することが必要です。
一覧は正常なのに開くと半分グレー
写真データを例に挙げますが、一覧表示(サムネイル画像表示)やファイル名などの表示は正常なため破損が進行していることに気づきにくい症状です。
一見正常なファイルでも、拡大表示すると写真の場合にはおよそ半分が「グレー」や「ベタぬり」の状態になってしまっていたり、動画の場合には再生中にブロックノイズだらけになったり勝手に停止したりといった症状が現れます。
これはファイル管理領域ではなく実際にデータが格納されている実データ領域のメモリ内容が壊れはじめていることが原因です。
これは原因がいくつも考えられるのですが、傾向としては「何年もデータを保管したままにしていたメモリ」に現れることが多いようです。
ご存知のとおりUSBメモリやSDカードに使用されているNANDフラッシュメモリというのは長期間のデータ保持がとても苦手な記録素子です。
とくに近年では高速化や大容量化のために長期保持性能が犠牲になっているものと考えられ、経験則としては10〜20年まえの設計のものよりも保持できる期間は10分の1や20分の1以下になっています。(おおむね数年〜5年の範囲です)
「データ自然消失」というキーワードで検索してこられるお客様も多いのですが、フラッシュメモリでデータ消失がはじまると急に綺麗さっぱり消え去るわけではなく部分的にじわじわと崩れていくと表現したほうが実態に即していると思います。
この消失症状がファイル管理領域に出るとファイル名がくずれたり見慣れないフォルダができあがってしまったり、あるいはフォマットを促されたりするわけですが、実データ領域のほうがはるかに広い空間なため確率的には前述のように開いたファイルが正常に再生できないという症状になることが多くなります。
またこれは、メモリの使用未使用にかかわらず発生しますから、カードの搭載メモリ容量いっぱいまで記録したままにしていると壊れはじめていることに気づきやすくなります(空き領域があればあるほど消失に気づきにくい)
一覧は正常なのに開けない
パソコンやスマホまたはカメラで一覧表示をしている間はあたかも正常に見えるのに、実際に開こうとするとエラーが出て開けなかったり、開いても中身が壊れていて正常に見ることができないということが起こります。
これは内部メモリの自然消失が部分的に発生しはじめている場合にも起こりますが、もっと深刻なメモリ側のトラブルであることも少なくありません。
いずれの原因にせよ、むりにアクセスを続けることでより一層広範囲なデータが巻き込まれてしまうため、正常に残されているものだけでもコピーしようとする場合でも(少しでも反応が遅いファイルがあればコピー作業を即座に中止するなど)非常に慎重な対応が必要です。
この症状については原因にもよりますが基本的には時間の経過とともに悪化しつづける傾向が強いため、症状を確認したらなるべくはやく専門業者での対応が望ましいと考えます。
一覧表示が正常に出ない
SDカードなどの中に入っているはずの一覧を見ようとすると「壊れたファイル」を表すアイコンばかりが表示されることになり一覧が正常に出てこないことがあります。
これはいくつか原因があり、
・ファイル管理領域データが壊れている
・メモリが正常に応答しなくなっている
・サムネイル情報が壊れている
という可能性が考えられます。
この症状でネット検索をかけてみると「スマホを再起動する」という指示が民間療法的にとりあげられていますが、どちらかといえば再起動をきっかけにカードにとどめを刺してしまうことに繋がりますのでおすすめはできません。
もし再起動を試したあと、SDカードの反応がまったく無くなってしまったときは一刻も早くカードを取り外して保管するようにしてください。
カードやメモリが発熱して溶ける
どちらかと言えばmicroSDでよくお預かりすることが多いのですが、メモリの種類にかかわらず発生する症状です。
原因としては内部回路のリーク(ショート)により過電流が流れてしまい部分的に電熱線のように発熱する症状が出ます。
原因の大半はカードの抜き差し時に曲げ方向の圧力を加えてしまうことで内部回路に損傷が蓄積されることで、極端に折れ曲がればまったく反応がなくなるのですぐ不具合に気づけるのですが、そこまで至らないような僅かな曲がりの場合に発熱してしまうことが多いようです。
気づかずに放置していると樹脂筐体を溶かしてしまう熱量になりますので、くれぐれもカードの反応が遅いなと感じるときにはご注意ください。
SDカードが反応しなくなる
これもmicroSDで多い傾向です。
ついさっきまで正常に使えていたのに、カードリーダーに差し込んだりスマホに接続したとたんに無反応になった、というものです。
その後、もともと使っていた機器や別のパソコンなどに接続してみても無反応状態となり使用不可能になります。
このような症状の場合、カードをお預かりして外観を見ると割れてしまっていることがあります。
なかなか目視するのが難しいですが、慣れてくるとカード中腹あたりにヒビが入っているのが見えるようになったり、カード裏面を光にかざすと曲がっていることを見分けられるようになります。
このように、くれぐれもカードの抜き差しを行うときにはわずかでも曲げてしまわないように丁寧に扱うことを心がけてください。
microSDカードの場合には僅かな折れ曲がりであっても内部回路が致命的な損傷を受けてしまうため一瞬で修復不可能になります。
消せない・消しても復活する
USBメモリやSDカードなどのフラッシュメモリ媒体は書き込み操作をすべてスルーしてしまう症状が現れることがあります
昔は同じような症状を再現するのにWindowsのDiskpartコマンドを使って書き込み禁止のフラグを立てることにより似たような状況を作りだすことはできたのですが。
そしていまだに、その書き込み禁止フラグをコマンド操作でリセットすれば正常に戻るという記事に行き当たることもあるのですが、すでにそれとは全く異なる原因であることのほうが多いと思われます。
このような壊れ方をしている場合には、フォーマット処理を全く受け付けなかったり書き込み禁止と表示されてなにも操作できないというわかりやすい症状になることもありますが、
少しわかりにくい例としては、USBメモリやSDカード内のファイルを削除したはずなのに後でカードを入れ直してみたら勝手に復活していたという症状となる場合もあります。
これは実際には削除したものが復活したのではなく、そもそも削除が完全には実行されなかったことによるものです。
しかしユーザーの操作画面ではたしかに一旦は消えたように見えていたと思います。これはOS内部のキャッシュメモリがそのように振る舞って見せているだけで、実際の動作としてはキャッシュメモリからSDカードに対して削除操作を反映するはずの段階ですべてスルーされてしまうことが原因です。
このような壊れ方の場合にはエラーとして表示されることもないためなかなか原因につきあたることもなく悩まれる方も多いかもしれません。
ファイルにアクセスしたら全体が無反応に
重篤なメモリ破損の1つですが、破損メモリ領域に触れたとたんにメモリ全体が沈黙してしまうという厄介なものがあります。
このような症状が出ているカード類は復元ソフトではとうてい太刀打ちできず多くの場合には空っぽのファイルばかりが大量に出てきてしまうことになります。
メモリイメージを取り出そうとしても途中で接続が途切れてしまうため対処が極端に難しくなります。
ユーザー側から見た場合には、一覧表示ではすべて正常なように見えるものの実際に開こうとするとその瞬間から全てのデータがなかったことになってしまうという症状になることが大半かと思われます。
とても重篤な部類の症状ですのでけっして無理にアクセスを続けたり、削除や追記などをためそうとしないように注意いただきたいところです。
ドライブ名のみ表示されるが開けない
USBメモリで多くみられる症状です。
これは、一見するとソフト的なエラーのように見えますが実際には深刻なハードウェアのトラブルであり、設定などソフト的な対処で元にもどすことはできません。
状態としてはUSBメモリなどに搭載されているUSBインターフェイスのみが応答している状態であり、その先に接続されているはずのフラッシュメモリ本体が応答しない状態になっているために見られる現象です。
多くの場合にはすでにフラッシュメモリが完全に沈黙しており電気的な応答を返してこないため修復不可能なケースが多くなります。
USBデバイスとして認識されるが開けない
前述の「ドライブ名のみ表示されるが開けない」状態と同様に深刻なハードウェアトラブルです。
掲載している画像は正常なUSBメモリの場合の例ですが、赤丸で囲った部分の表示(ドライブレター)がまったく表示されない状態になります。
USBインターフェイスの反応だけが正常であり、その先にあるはずのメモリも何もかもが電気的に応答しない状態であることから、PCなどから見ると何が繋がっているかすら不明な状態となってしまいます。
原因の大半はフラッシュメモリチップの損傷や消耗であり、修復は非常に困難となります。
似たような症状として「パソコンに接続した時に音が鳴るが無反応」「USBメモリのランプが点灯するが無反応」といったものもありますが原因については同様に内部メモリチップの損傷が原因となります。
本来の容量の一部しか無い事に
たとえば、64GBのカードなのにいつのまにか全容量が32GBしかないことになっているというよに、本来搭載されているはずの容量の半分だったりごく一部の容量しか存在しないことになってしまうという奇妙な症状がでます。
この症状はずいぶん昔から遭遇する機会は何度もあったのですが、原因ははたして過去も現在も同じなのか実は疑問を持ったままです。
1セルが多値化したことによる弊害なのか、あるいは3D NANDが増えてきた今では積層された部分が途中から見えなくなってしまうような現象なんてのもあるのかもしれません。
いずれにしても、チップの中で物理的にアクセスできない(搭載されていないことになっている)メモリ空間が出来上がってしまうという深刻な物理破損症状であることには違いありません。